栄養素には五代栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルがありますが、これらの栄養素の中で普段何を意識していますか?
「1日分のビタミンがこれ一つで摂れる」
「たんぱく質が〇〇g摂れる」
といった商品をお店で見かけるようになりましたが、皆さんの健康意識が高まりこういった商品へのニーズも高まっているのでしょう。
ビタミンやたんぱく質も大切なのですが「ミネラル」は意識して摂れていますか?
ミネラルを意識している方は少ないかもしれませんが、実は、ミネラルがないと他の栄養素の働きが悪くなってしまい、良かれと思って摂っているビタミンやたんぱく質が上手く機能しないということが起こってしまうのです。
ミネラルとは
ミネラルとは、地球上に存在する無機物質の総称を指します。無機物質とは生物に由来しない・燃やしても灰にならず二酸化炭素も発生しない物質を指します。
ミネラルは地殻や地球内部、海水や岩石、土壌などさまざまな場所に存在し、生物にとって重要な栄養素として役立っています。
生物の種類や性別、成長段階によって必要な種類や量は異なりますが、すべての要素は適度な量を摂ることが良く、欠乏症だけでなく過剰摂取も病気の原因になることがあります。 ミネラルは人の体内で作ることはできないため、毎日の食事から摂取する必要があります。
人の体に存在する元素はやく60種類といわれていますが最も多いのは酸素65%、尿素18%、水素10%,窒素3%,ミネラル4%となります。たった4%ですが欠乏してしまうと私たちは生きていけません。そのため何を食べるか?が重要です。
ミネラルの種類
ミネラルの種類は多く、100種類以上あるといわれており、その中でも人の身体に必要とされるミネラルは16種類あります。
この中でも硫黄、塩素、コバルトを除いた13種類が厚生労働省によって摂取基準が設けられています。
・カルシウム ・リン ・マグネシウム
・ナトリウム ・カリウム ・硫黄 ・塩素
・鉄 ・銅 ・クロム ・モリブデン
・亜鉛 ・ヨウ素 ・セレン ・マンガン ・コバルト
ミネラルの働き
体の代謝や構成要素として欠かせないミネラル
== カルシウム・マグネシウム ==
骨・歯・爪に欠かせないのがカルシウム、リン、マグネシウムです。人の体は食べたものでできていると言われているように食べ物をしっかり咀嚼するためには丈夫な歯が必要ですし、身体を動かすためには丈夫な骨がなければ自由に動けません。
骨にはカルシウムといわれていますが、注意したいのはマグネシウムとのバランスになります。マグネシウムはカルシウムのブラザーイオンとも呼ばれるカルシウムの働きに重要な役割があります。骨のためにカルシウムを摂りすぎると十分に吸収されずに排泄されてしまいます。この時にマグネシウムも一緒に排泄されてしまうため結果、脆い骨になってしまいます。骨のために牛乳を飲むことは、カルシウム過剰になり骨粗鬆症の原因にもなりかねるので常飲は避けたいです。
また日本人の腸は牛乳に含まれるたんぱく質のガゼインの吸収に適していないためお腹を壊す人が多いので、カルシウムを摂るならば小魚、干しエビ、海藻など日本人に馴染み深い食材が体にも優しくマグネシウムも豊富なのでおすすめです。マグネシウムは糖質の代謝、タンパク質の合成、筋肉の弛緩に関わります。体を動かすエネルギーを作り出す約300種類の酵素反応に関わっているので特に不足に気をつけたいミネラルです。
そのためマグネシウム不足があると疲れやすい、足が攣る、頭痛、高血圧、不眠、イライラするなど様々な不調を招きます。カルシウムは筋肉の収縮や神経の安定、マグネシウムは筋肉の弛緩にも関わっているため筋肉に痛みがある時はマグネシウムが不足しているかもしれません。
== リン ==
リンは骨の形成やエネルギーの代謝に関わり細胞やDNAを作るのに欠かせません。リンは動物性食品にも植物性食品にも含まれているため不足することはありませんが加工品に含まれるリン酸塩の摂り過ぎによりリン過剰になると骨が脆くなります。エネルギー代謝の際のADP(アデノシン2リン酸)ATP(アデノシン3リン酸)を作る過程において必要不可欠な成分です。
== 鉄・銅 ==
そして血液に関わる重要なミネラルが鉄と銅です。
血液の成分のうち全身に酸素を運ぶのが赤血球で、この赤血球の材料に必要不可欠なのが鉄です。そして鉄の働きをサポートするのが銅です。鉄は肝臓による解毒作用を助け、銅は体が酸化して老化するのに対抗し皮膚や髪を健康な状態に保ちます。血液が不足していると栄養や酸素が体の隅々まで届かずに色々な不調の原因にもなります。
== ナトリウム・カリウム ==
ナトリウムとカリウムは体の水分調節をするのに欠かせません。ナトリウムはご存じ塩です。塩を食べると喉が渇くと思いますが、体内のナトリウム濃度が上がると体内の水分量を増やそうとするからです。ですが、体内に水分量が増えすぎるとむくみが起きます。そこでカリウムが増えすぎたナトリウムを体外へ排出し正常な状態を維持しようとします。
== クロム・モリブデン ==
クロムは血糖値を下げるインスリンを助け、血液中のコレステロールや中性脂肪を下げる働きがあります。モリブデンは様々な代謝に関わる酵素をサポートします。また、体から不必要なものを排出する際にもサポートしています。
== 亜鉛 ==
亜鉛の働きは、味覚を正常に保つ、細胞を作り成長を助ける、男性ホルモン・女性ホルモンの合成、抗酸化作用、免疫向上、皮膚や髪・傷の修復、メンタルの安定など多岐にわたります。赤血球の合成では、亜鉛が不足すると壊れやすい赤血球になってしまうため結果として貧血をおこしてしまいます。細胞分裂が盛んな成長期の子どもは不足すると低身長・メンタル不安定など様々な不調を招きます。アルコールの代謝の際に特に使われるので普段からアルコールを摂る方は意識して摂ることをおすすめします。
脳神経細胞にダメージを与える「うまみ調味料」グルタミン酸ナトリウムによる神経の興奮を抑制し解毒するのが亜鉛とマグネシウムです。添加物や人工甘味料も体は毒とみなし解毒に亜鉛が使われてしまうため、普段の食事は出来るだけこのようなものを避ける工夫も必要です。様々な働きがある亜鉛ですが過剰に摂ると銅欠乏症の恐れがあるため、サプリメントで摂取する際は注意が必要です。
== ヨウ素 ==
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料です。甲状腺ホルモンは生殖や成長にとっても、非常に重要な役割を果たしているものです。胎児の脳・末梢組織・骨格などの発育など、体内のさまざまな反応に関与しています。海藻などに多く含まれていて日本人では不足しにくいと言われますが昆布を過剰に継続して食べ続けるなどで甲状腺機能の低下になる可能性があるので注意が必要です。
==セレン・マンガン==
セレンは抗酸化作用があり、細胞を傷つけ体を老化させる活性酸素の働きを抑制、動脈硬化予防、水銀・ヒ素・カドミウムのような有毒物質の吸収を阻害します。マンガンは酸化還元酵素、加水分解酵素、脱水酵素、転移酵素など体内の代謝で重要な多くの酵素を活性化させます。体の機能維持にも必要で生殖機能・脂質代謝・脳機能を正常化する働きもあります。
日本人はミネラル不足!?
ミネラル不足でおきる症状
・疲れやすい ・うつ ・貧血 ・頭痛 ・糖尿病 ・骨粗鬆症 ・アレルギー ・アトピー性皮膚炎 ・肌荒れ ・体の痛み(腰痛・肩こりなど) ・冷え性 ・むくみ ・食欲不振 ・体重増加 ・味覚障害 ・便秘・高血圧 ・免疫力低下 ・集中力低下 ・イライラするなど
皆さん、これらの症状のどれか一つは当てはまるのではないでしょうか?毎日の食事からミネラルが摂れていればこのような症状がおきにくいはずです。
飽食の時代になり日本では簡単に食べ物が手に入ります。
そのため栄養が不足することはないのでは?と思うかもしれませんが、カロリーは足りていても質的栄養が不足しているのが現在の日本に多くみられる食事です。
様々な不調がおこる原因として現在の日本の食事情が背景にあります。
野菜でいうと、近年は度重なる化学肥料や農薬の使用によって土壌のミネラルバランスが崩れています。土自体に栄養がないため野菜のミネラル量も減少しています。
米・小麦・砂糖など精製されているものほど栄養価は下がります。白く精製されたものにはミネラルはなく、ほぼ糖質だけになりこれらを摂り続けることで腸内環境の乱れや血糖値の乱高下を引き起こし様々な不調を招きます。
そして、インスタント、レトルト食品などの加工食品を多く食べているとミネラル不足になります。
清涼飲料水、カップ麺、冷凍食品などの加工品の添加物として使われている「リン酸塩」はph調整剤、かんすい、乳化剤、アミノ酸(調味料)、ガムベース、イーストフードなど食品の裏表示に記されていますが、これらはカルシウムの吸収を阻害するので骨を脆くしてしまいます。添加物はミネラル不足になる他にも脳神経や腸内環境にも影響を及ぼします。
ミネラルが摂れる食材は?
カルシウム・・干しエビ、小魚、ひじき、厚揚げ、小松菜
リン・・するめいか、カツオ、豚レバー、厚揚げ、玄米
マグネシウム・・あおさ、大豆、ナッツ類、ほうれん草
ナトリウム・・天然塩(食塩は過剰摂取)、海藻
カリウム・・ほうれん草、里芋、さつまいも、アボカド
鉄・・レバー、赤身肉、アサリ、ひじき、大豆、小松菜
銅・・牛レバー、干しエビ、ピュアココア、ブラジルナッツ
クロム・・あおさ、冷凍アサイー、バジル粉、パセリ粉
モリブデン・・大豆、えんどう豆、そら豆
亜鉛・・牡蠣、レバー、赤身肉、煮干し、舞茸、胡麻
ヨウ素・・昆布、わかめ、イワシ、さば
セレン・・たらこ、イワシ、わかさぎ、ホタテ貝、アサリ
マンガン・・栗、アーモンド、大豆、くるみ、ごま
このようにいろいろな食材にミネラルは含まれています。
何から摂ろうか?と迷った時は
「まごわやさしい」
ま・・まめ
ご・・ごま
わ・・わかめ(海藻)
や・・野菜
さ・・魚
し・・しいたけなどのキノコ類
い・・いも、玄米などの穀物
まごわやさしい食材でバランスの良いメニューができます。
これらは日本人が昔から食べてきたものです。
食の欧米化により小麦や牛乳など日本人の体に適さない食材、添加物を多く使った食品が食卓に多く並ぶようになり「まごわやさしい」を食べていた頃よりも日本人の病気が増えています。また、幼少期からこれらの食材を多く食べてきた子どもは質的栄養不足となり「新型栄養失調」のリスクがあります。
忙しい現代人の料理を簡単にするために化学調味料など添加物が使われているレトルト食品や冷凍食品、カップ麺などを常食する機会が増えました。栄養を意識しだすと安全な食品を探す方が難しいですが無農薬で野菜を育てていいる農家さん、無添加の食品を扱う自然食品店なども増えています。
「買い物は投票だ」という言葉どおり私たちが何を選ぶかで社会を変えられるならば、体にいい安全な食材を選び、毎日笑顔で過ごすことで病気や体の痛みに悩む人が今よりもいなくなると思います。食材を選ぶ時や不調があった時にはミネラルを意識して摂ってみてください。
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