人前で過度に緊張する”あがり症”の原因と効果的な対策

本記事は神戸ナカムラクリニック中村篤史院長から許諾いただき、「院長ブログ」に掲載された「緊張症」を再編集したものです。
患者さん
わたしは、あがり症なので会社で皆の前で何か発表するときなどは声が上ずったり、自分の言いたいことが言えなかったりすることもしばしばあるんです…
中村先生
お薬は?飲まれてはいないのですか?
患者さん
薬は頓服ではなく毎日飲んでいます。職場の同僚との何でもない雑談のときでも、不必要に緊張してしまうことがあるので。変なやつだと思われたくないですし…
中村先生
何のお薬を飲んでいるのですか?
患者さん
メイラックス(抑制性神経伝達物質GABAの作用を強めることによって、気持ちを落ちつかせたり、緊張や不安をやわらげたりする薬)、抗うつ薬、降圧薬は手放せません。降圧薬はドキドキを抑えるために飲んでいます。ただ、血圧は正常なので適応外処方だといわれています。デパス(不安や緊張をやわらげ、筋肉の緊張をとる作用がある薬)がよく効くのですが、眠くなっては困るので、本当に緊張するときの最後の手段として飲むように心がけています。
中村先生
なるほど。標準的な処方ですね。
患者さん
昔は率先して人の前に立つタイプだったんです。中学生の時は生徒会の役員をやっていまして、会議の場で進行役をするのが得意でした。でもあるとき、そういう会議の場で急に声が上ずってしゃべれなくなったのです。
中村先生
何かきっかけがあったのですか?
患者さん
よくわかりませんが、それ以来、緊張症は私の持病になってしまい、人の目を見て話すことができなくなりました。人とのコミュニケーションが苦手になりました。大学時代も発表で教授や研究室のみんなの前で話すことができなくて苦労しました。それで初めて、心療内科に通いデパスをもらいました。デパスは本当に効きました。みんなの前で饒舌に話すことができるようになり、緊張知らずだった小学生のときの本来の自分に戻れたみたいでした。
中村先生
それからどういう生活がつづきましたか?
患者さん
会社に入ってからもデパスに頼っていたのですが、眠気がひどくて困りました。会社の発表の場で、自分の発表をこなせたのはいいものの、そのあとは寝てしまいます。発表会は、当たり前ですが自分の発表さえすれば終わりではなく、他人の発表もきちんときいてこその発表会なんです。
患者さん
女性との交流も緊張してしまいます。あがってしまうと言葉が出ません。相手にどう思われるかと思うと、恋愛にも踏み出せません…

あがり症(緊張症)に効く糖質制限

こうした緊張症についてオーソモレキュラー栄養療法としては、糖質制限をおすすめします。緊張というのは、つまり、交感神経と副交感神経のアンバランスが原因です。そして、そのアンバランスは食事に起因することが多いのです。

砂糖が含まれた食品はもちろん、ご飯、パン、麺などの炭水化物を摂取すると、体内でグルコースに分解され血糖値を上げます。炭水化物の中でも精製糖質由来のもは血糖値を急激に上昇させてしまうため、これを下げるために膵臓からインスリンが大量に分泌されます。すると血糖値が下がりすぎてしまい反応性低血糖をきたします。そのため今度はグルカゴン、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)など、交感神経を興奮させるホルモンが分泌されます。こうしたジェットコースターのような血糖値スパイクがイライラしたり緊張したりという精神症状を誘発するのです。

ただ、解決策はとても簡単で、血糖値の乱高下を招くような食品をとらなければ良いだけです。このことを説明すると、患者さんご自身に思い当たるふしがあったようで、

患者さん
それは実感としてとてもよくわかります。お昼ご飯を食べると、午後、社内で何かを発表しないといけないときはすごく緊張するのですが、お昼ご飯を食べずにいると不思議と緊張しないということに気付いていました。ですから、大事な発表の前にはお昼を食べないようにしています。しかし、緊張の背景にはそういう生理メカニズムがあることは知りませんでした。
なるほど、とても参考になりました。

糖質を完全にカットする必要はない

人体の仕組みを理解することで、解決方法に対してより意識的になることができます。意識が高まれば、その方法はもっと洗練されていきます。この患者さんの場合は、お昼ご飯を抜くと緊張しないということは経験的に分かっていました。そして、より具体的に、糖質のInputが停止したことが奏功したのだということを理解すると、野菜やタンパク質は食べても良く、完全に断食する必要はないという本質に近くことができます。

ただ、食事には盲点がけっこう多いのでご用心ください。
「炭水化物はダメだけど野菜はOK。ならば、タンパク質を食べよう」と思って、お昼に外食でトンカツを注文するとどうなるでしょうか。野菜にはブドウ糖果糖液糖たっぷりのドレッシング、トンカツには小麦粉やパン粉という炭水化物で覆われた豚肉に糖質たっぷりのソースがかかっていて…、という具合に予想以上に糖質を摂ってしまうはずですから、その点はお気をつけください。

患者さんの目の前に神様が突然現れて、

女神
職場の同僚や女性に対して、薬に頼ることなく、物おじせず堂々とふるまうことができるようになりたいか?しかし、そのかわり一生甘いものを食べることができなくなるが、それでもよいか?

と言われたら、こういう人ちたちはきっと二つ返事で「YES!」と言うはずです。緊張症のせいでどれほど自分の人生が傷つけられてきたことか、彼らは身に染みて知っているからです。糖質制限だけで症状が軽快するというのなら、喜んで我慢することでしょう。

真の治療法は、デパスやメイラックスの中にあるのではなく、もっと手近なところにあるものです。オーソモレキュラー栄養療法はそれを如実に教えてくれます。

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オーソモレキュラー栄養療法で筋痛症改善を!

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ABOUTこの記事をかいた人

續池均

セブンシーズ・アンド・パートナーズ株式会社代表取締役  大学卒業後、食品メーカーに7年勤務し、ITベンチャー企業へ転職。2005年12月に事業管掌役員として東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たす。その後、独立起業し現在に至る。 四児の父として育児に奔走しつつ、自らの體の再生に光を当ててくれた整体に興味を抱き2016年に「ミオンパシーサロンUROOM」を開業。5年の整体院経営で培った理論と実践からMTR Method™️を開発。「筋肉チューニング整体院UROOM」へ昇華改名し、オーソモレキュラー栄養療法に基づく栄養ストラテジーを実践する健康食品ブランド「医食同源Lab」の開発など人體研究者として邁進している。