栄養がメンタルに影響する!?脳と腸から見えてくる「うつ」の話

「何となく憂うつな気分が晴れない」
「ネガティブなことばかり考えてしまう」
「仕事や学校のことを考えると眠れなくなってしまう」
「疲れが抜けない」
「何だかうつっぽいなあ」
・・
こんな思いになったことは、大なり小なり誰でもあることと思います。
気分の波はあって当たり前。
でも、ちょっとした抑うつ状態が悪化して、仕事や学校に行けなくなったり自傷行為に至ってしまうなど、生活に支障をきたすようになると大変です。
こうしたケースが病院で「うつ病」と診断されることがあります。
日本でも年々患者数が増えているといわれている「うつ病」。
知らぬ間にストレスが積み重なって、ある日心がポッキリ折れてしまう・・そんなふうにはなりたくありませんよね。
もしかしたらちょっとした工夫で、そんなストレスの蓄積は避けられるかもしれません。

「うつ」とは

本記事では、軽度~重度の抑うつ状態までを含めて広義に「うつ」として扱います。
抑うつ状態が軽度だと日常生活にさほど支障はありませんが、重症化して病院で「うつ病」と診断されるほどの状態になると、他人とのコミュニケーションや仕事、学業が困難になってしまいます。
うつ病の原因は正確にはよく分かっていませんが、精神的、身体的なストレスや遺伝的要因、環境要因などが複雑に絡み合って発症するといわれています。
また、近年では栄養状態も重要な要因の一つであるとみなされています。
うつ病には下記のように様々なタイプがあります。

●「メランコリー型」・・一般に認知されている典型的なうつ病で、「一日中気分が落ち込んでいる」「何をやっても楽しめない」などの精神症状や、「眠れない」「食欲がわかない」「倦怠感が続いている」などの身体症状を伴います。「全て自分が悪い」など自分を責めてしまう特徴もあります。
●「非定型」・・気分の変動が激しく、「現代型うつ病」「新型うつ病」などと呼ばれています。仕事中は落ち込んでいても、遊ぶ時などストレスを感じなければ気分が良いというような特徴があります。「メランコリー型」と違って他責思考の傾向もあり、20代~30代の女性に多いとされています。「非定型」には「季節型感情障害」といって、特定の季節(主に冬季)に発症するものも含まれます。
●「産後」・・出産によるホルモンバランスの崩れや睡眠不足、ストレスなどが影響していると考えられています。女性は妊娠中や思春期、更年期も同様の理由からうつ病にかかるケースがあります。


ちなみに、ゴールデンウィーク明け以降にかかることが多いとされる「五月病」「六月病」は、正式には「適応障害」と呼ばれるもので、抑うつ状態は伴うもののうつ病とは別です。
新しい職場や学校、家庭などといった環境の変化に対するストレスが原因となるもので、数か月以内に改善するケースが多いとされていますが、長引くことでうつ病に移行してしまうことも少なくありません。
他にもうつ病と似ているものに「双極性障害」ありますが、これはうつ状態と躁状態(気分が高ぶっている状態)を繰り返すもので、治療法が大きく異なるため注意が必要です。
うつ病と診断された場合は専門医による治療が必要ですが、本記事ではそうなる前にできること――重症化予防のための脳と腸、栄養の話を中心にお伝えしていきます。

「うつ」は脳の栄養不足!?

神経伝達物質について

脳の中は神経細胞が無数につながっていて、神経伝達物質を介して情報をやり取りしています。
神経伝達物質とは、神経細胞間の情報伝達を担う物質のことですが、この働きによって、私たちは考えたり感じたり、さらには行動したりすることができます。
逆に言えば、神経伝達物質の働きが不十分だと脳の働きも不十分になってしまうのです。
うつ病の原因の一つが、この神経伝達物質の働きの低下と考えられています。
神経伝達物質には多くの種類がありますが、感情の伝達には①興奮系②抑制系③調整系の神経伝達物質が関わっており、この3つのバランスで色々な感情が湧いたり、時には心が不安定になったりします。

神経伝達物質の主な分類
興奮系 ドーパミン、ノルアドレナリン、グルタミン酸、アセチルコリン など
抑制系 GABA など
調整系 セロトニン など

中でも③のセロトニンは人が幸せを感じたり、物事をポジティブに考えることの9割に関係していると言われており、俗に「幸せホルモン」と呼ばれる通り、心のありように深く関わっています。
セロトニンは調整系のホルモンとして他の神経伝達物質のバランスを保つことで心を落ち着かせたり、「睡眠ホルモン」であるメラトニンの材料となって体内時計を整える働きをしています。
不足するとイライラしやすくなったり、食欲が抑えられず過食気味になる、不眠、不安やうつ、パニック障害などを引き起こすともいわれています。

タンパク質の重要性

ここで重要なことは、セロトニンをはじめとする神経伝達物質は全て食べ物由来であり、主な材料がタンパク質であるということです。
つまり、脳の栄養不足の一番筆頭はタンパク質不足であるといえるのです。
また、タンパク質は腸でアミノ酸に分解されて脳に運ばれますが、一部のアミノ酸はそれ自体が神経伝達物質の役割を担っていることも分かっています。
さらに、うつ病患者の脳には脳の活性化に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF)が少ないことが分かっていますが、このBDNFも脳の神経細胞が作り出すたんぱく質の一種です。
BDNFは神経細胞の成長や新生を促進し、新しいシナプスの形成を促して神経ネットワークの再構築をサポートする――脳の活性化や認知機能の維持に極めて重要な役割を果たしています。
タンパク質は筋肉や内臓、皮膚など体を作る材料になることはよく知られていますが、実はメンタルにも深く関係しているのです。

不足注意の重要栄養素。不調改善の第一歩、タンパク質

ビタミンやミネラル

各種アミノ酸から神経伝達物質が生成される過程の随所で、ビタミン(ビタミンB6,葉酸、ナイアシン、ビタミンC)やミネラル(マグネシウム、鉄、銅)が必要となります。
例えばL―トリプトファンというアミノ酸は、葉酸や鉄、ナイアシンの働きによって5-HTPに、さらにビタミンB6によってセロトニンが合成されます。
特にビタミンB6はセロトニン以外にもやドーパミン、GABAなど他の神経伝達物質の生成にも必要不可欠ですが、糖質の摂取やアルコール、喫煙、ストレス、頭脳労働などの生活習慣の影響で消費されやすい栄養素です。
また、ビタミンB群は複合的に働くので、ビタミンB6だけ摂っていればいいというものではありませんし、そもそも「代謝ビタミン」として私たちが生きていくエネルギーを作る上で欠かせないものなので、不足するとタンパク質や脂質、糖質などの栄養素をうまくエネルギーに変えられず、疲労感や無気力感にもつながりやすいので注意が必要です。

生きるためのエネルギー足りていますか? ビタミンB群と代謝エネルギー

腸が決め手!ディスバイオシスが脳に及ぼす影響

ディスバイオシスとは、腸内細菌のバランスの乱れのことをいいます。
ディスバイオシスは全身の健康だけでなく、精神活動にも悪影響を及ぼすことが様々な研究によって分かっています。

「腸内細菌がマウスの行動に影響を与えていることを初めて明らかにしたのは、スウェーデンのカロリンスカ研究所と、シンガポールのジェノーム研究所の研究チームであった。彼らはふつうの腸内細菌を持つマウスと腸内細菌を持たないマウスを利用し、、それぞれの成長を観察した。その結果、腸内細菌を持たないマウスは成長後より攻撃的になり、危険を伴う行動を示すことが分かった。」
(引用:藤田紘一郎「こころとからだの免疫学」『心身健康医学』8巻2号 2012年より)

腸内細菌のバランスが崩れることで炎症反応が引き起こされ、脳にも炎症が起きてうつ病につながりやすくなってしまいます。
まずは腸と脳との密接な関係(腸脳相関)についてみていきましょう。

「腸脳相関」と神経伝達物質(セロトニン)

腸と脳には密接なつながりがあります

「腹を立てる」
「はらわたが煮えくり返る」
「腹を割って話す」
「腑に落ちる」
・・
日本語には、上記のように心の状態を「腹」で表現する言葉がたくさんありますが、我々の祖先は古来腸と脳の関係を直感的に知っていたものと思われます。実際、腸と脳とは神経系、内分泌系、免疫系の三つの経路でダイレクトに繋がっており、相互に影響を及ぼすことが分かっています。ストレスでお腹が痛くなる、などの脳から腸への影響は体験的にもよく知られていますが、腸の状態の善し悪しが脳に影響を与えていることが、近年ではより注目されてきています。
これを「腸脳相関」といいます。

さらに、「腸は第二の脳と言われるように、腸には1億個以上の神経細胞が存在していて、「腸管神経系」と呼ばれる独自のネットワークがあることが分かっています。
これにより、栄養吸収、蠕動運動、異物を認識して排除するなど、脳に頼らずに独自に判断して活動できるという大きな特徴があります。
また、この腸管神経系は迷走神経を通じて脳にさまざまな情報を伝えていますが、脳から伝えられる情報量よりもはるかに多いといわれています。
腸から脳への影響が侮れないというわけですね。

この影響を考える上でキーとなる神経伝達物質が、先述のセロトニンになります。
脳内ホルモンのほとんどは腸にも存在していますが、中でもセロトニンはその9割以上が腸管で作られており、逆に脳には数%しかないことが分かっています。
腸で作られたセロトニンは腸の活動をサポートするだけでなく、血流を通して全身に運ばれ、血液凝固や血管の収縮、骨代謝などに関わります(腸と脳のセロトニンについてはまだ分かっていないことも多く、神経系を通じて脳に直接届けられるという説もあります)。
逆に腸内環境が悪いと、脳にセロトニンのもととなる必須アミノ酸のトリプトファンが十分に届かなくなってしまうため、神経伝達物質のバランスの乱れにつながます。
そうすると、イライラが高じるなどして自律神経も乱れやすくなり、交感神経が優位になって腸の働きが低下する、といった悪循環に陥りやすくなってしまうのです。

ディスバイオシスの原因の一つが「リーキーガット症候群」

腸では本来、異物を体内に入れないように腸粘膜細胞がしっかりと結びついています。
ところが、腸が炎症を起こすとこの結びつきが緩んでしまい、腸管壁に穴があいて本来は通さないはずの未消化の食物や有害物質、ウィルスなどを体内に取り込んでしまいます(「リーキーガット症候群」)。
これにより体内に炎症を引き起こし、便秘や下痢、偏頭痛、生理痛、食物アレルギーや化学物質過敏症、低血糖症などさまざまな体調不良につながるといわれています。
脳においても、炎症性のサイトカインが脳に入って神経炎症を引き起こし、うつ病や認知機能低下のリスクを高めてしまいます。
リーキーガットの原因としては、次のようなものが挙げられます。

●グルテンやカゼイン

グルテンは小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質の一種ですが、グルテンが分解されたあとのグリアジンという成分が原因となって、腸の細胞間の結びつきをゆるめてしまいます。
特にグルテンはセリアック病などの自己免疫疾患の発症に関与しているといわれています。
カゼインは乳製品に含まれるたんぱく質で、いくつかの種類があります。
このうち牛乳などに含まれているα-カゼインや、カゼインの消化の過程で生成されるカソモルフィンなどのペプチドが腸の粘膜を傷つけ、リーキーガットを引き起こします。
グルテンとカゼインは相乗的に腸壁に悪影響を与えてしまう可能性もあるとされています。

●カンジタ菌

カンジタ菌は体のどこにでもいる常在菌ですが、腸で増えすぎることで腸粘膜にダメージを与え、リーキーガットの引き金となることが分かっています。
カンジタ菌を増殖させる原因の一つに挙げられるのは、砂糖や果糖などの甘い物や糖質の摂りすぎです。
他にも、抗生物質の乱用は悪玉菌だけでなく善玉菌も殺してしまい、カンジタ菌には効かないために腸内細菌のバランスを崩してしまいます。

短鎖脂肪酸(SCFA)の重要な役割

短鎖脂肪酸(SCFA)は、健康な腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵させて産生する有機酸で、主要なものに酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。
短鎖脂肪酸には、腸粘液の分泌を促すことで腸のバリア機能を維持し、炎症を抑制する働きがあるほか、大腸や肝臓、筋肉だけでなく脳のエネルギー源としても使われており、神経細胞の機能維持にも重要な役割を担っています。
また、短鎖脂肪酸はBDNFの産生を増加させることも分かっていて、それによる抗うつ効果も注目されています
うつ病患者は健常者に比べて脳内のBDNFの量が少ないことが分かっていますが、マウスを使った実験では、短鎖脂肪酸の一つである酪酸を投与されたマウスの脳内でBDNFが増加することなどが確認されています(※)。
短鎖脂肪酸は、善玉菌の好む水溶性食物繊維(根菜類やキノコ類、海藻類など)を摂ったり、善玉菌を多く含んだ納豆や漬物、みそなどの発酵食品を摂ることで増やすことが出来ます。
(※)Schroeder FA et al. Biol Psychiatry. 2007 Jul 1;62(1):55-64. Epub 2006 Aug 30

「うつ」予防のためにできること

栄養の観点から「うつ」予防についてみてきましたが、脳の栄養不良の解消と腸内環境の改善がポイントでした。
そのためにできることは、以下のようにたくさんあります。

●脳の栄養不良を避けるために、タンパク質ビタミンミネラルの摂取を普段から心掛けましょう。
他にも、抗うつ効果があり、特に冬季うつ病と関連していると言われているビタミンDをしっかり摂ることも大切。
ビタミンDの受容体(VDR)は脳内の多くの部位に存在し、これらの受容体は脳の機能や発達に重要な影響を及ぼすことが分かっています。

あなどれないビタミンDのスーパー効果

腸内環境改善のためには、まずは腸に悪影響を及ぼすものを減らしていくことが大切です(グルテンやカゼイン、食品添加物、甘い物の摂りすぎ、抗生物質など)。
特に、甘い物の摂り過ぎは血糖値の乱高下を引き起こす低血糖症(血糖調節障害)にもつながります。
低血糖は病院でのうつ病の診断では見過ごされやすいですが、神経伝達物質のバランスを乱し、イライラや思考力の低下、めまい、不安感など、うつ病によく似た症状を引き起こすので注意が必要です。
低血糖は他にも、糖尿病や心筋梗塞、がん、認知症などの様々な病気や不調に関連しています。

●腸内環境を良くするために、善玉菌が喜ぶ食物繊維を含んだ食物をしっかり摂取しましょう。
また、先述のビタミンDには腸粘膜細胞同士をしっかり結び付けるタイトジャンクションの結合を強くしてくれる働きもあり、腸内環境を整える上でも重要な役割を果たしています。

●生活習慣の乱れは自律神経の乱れに繋がります。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れて交感神経優位の状態が続くと、リラックスできず腸の機能も低下してしまい、ストレスを受けやすくなってしまいます。
食生活を正していくこと以外にも、十分な睡眠時間の確保や適度な運動、日々のストレス管理も心がけましょう。
「うつ」に深く関わるセロトニンは、食事以外でも、朝日を浴びることやウォーキング等の適度なリズム運動、森林浴、家族や親しい友人との団らんなどによって増やすことが出来ます。

●「筋肉チューニング」のような心地よい体への刺激も、セロトニンやオキシトシン(「愛情ホルモン」と呼ばれており、ストレス軽減効果がある)を増やしてくれます。
うつ的傾向にある方は無意識的な緊張が強く、首や肩周り、背中がガチガチなことも多いので、施術によって筋肉が緩んで血流が促されると、リラックスできて自律神経のバランスも整いやすくなります。
また、UROOMでは栄養やセルフケアのアドバイスも行なっているので、施術と栄養アプローチとの相乗効果も期待できます。

「最近何だかうつっぽいなあ」と感じる方は、今回の記事を参考に、ぜひ普段の食事や生活習慣を見直すことから始めてみて下さいね!

 

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